NAGANOKEN−KOGEIKAI

第28回県民芸術祭参加

第27回 長野県工芸展

長野県県民文化会館 展示室

平成19年(2007年) 10月4日(木)〜10月8日(月)

主 催/ 長野県工芸会・ 長野県・ 長野県教育委員会・ 長野県芸術文化協会
長野市・ 長野市教育委員会・ SBC信越放送

協 賛/ 信濃毎日新聞社

 

 


第27回 長野県工芸展 入賞作品

 審査 委員

 榎 本   徹  (岐阜県現代陶芸美術館 館長)

 外 舘 和 子  (茨城県陶芸美術館 主任学芸員)

 鈴 木   潔  (北澤美術館 学芸部長)

 伊 藤 羊 子  (信濃美術館 学芸チームリーダー)

 小 出 文 生  (長野県工芸会会長)

(敬称略・順不同)

審 査 講 評

 
審査委員長 榎本 徹


 この展覧会の審査は2年ぶりであるが、確実にレベルは上がっているという印象を受けた。
 おしくも落選となった作品は、技術的な問題もあるが、それ以上に方向性の問題であると思う。基本的に工芸というジャンルは説明的な造形を必要としない。たとえば花器に花の形も文様も必要ないのである。
 ジャンル的な問題として、今回審査員の間で話題になったのは、人形における台の問題である。本来工芸的な造形には台は不要のものであるが、人形というジャンルはそれを作品そのものとして要求されている。したがって、作品の一部としての心遣いを強く要求されていることは、もっと意識されてもいい。
 陶芸に関しては、もう少し今日的なデザイン感覚を取り入れてほしい。やりすぎという問題もあいかわらず目につくが、デザインの基本は引き算であり、足し算に陥ることを避けてほしい。
 全体的に作品のねらいを明確に定め、そのためにしなくてはいけないことだけを、大胆に表現してほしいと思う。
 また、工芸的造形に基本として求められている完成度、つまり仕上げの丁寧さを、出品の前に、もう一度自分の作品を見なおすことにより確認してほしい。細部の荒さは、工芸的なおもしろみを大きく損なうものである。

 

長野県工芸会長賞

踊る波

曽根英司(長野市)

陶芸

長野県知事賞

百足紋腰帯留金具

長井一馬(大町市)

金工

SBC信越放送賞

手紡天蚕織 爽風

和久井ゆき子(須坂市)

染織

長野県教育委員会賞

月白輪花鉢

土屋 晃(長野市)

陶芸

信濃毎日新聞社賞

氷 雪

竹腰米子(長野市)

人形

北澤美術館賞

うす赤色壷

竹内君則(千曲市)

陶芸

 


長野県工芸会長賞

踊る波(陶芸)

曽根英司(長野市)

 下から上へ、うねりながらせり上がるようなフォルムは、まさに「踊る波」である。
 力強く動的な線文、青々とした釉薬の調子など、表現要素のすべてが海の躍動感をシンボリックに表現して迫力がある。
 

 とりわけ、せめぎ合うような口の部分は、この作品の見どころである。 制作中の切れを修復しようとした跡がみられるが、そうした欠点を差し引いてなお、明快な主張と堂々たる存在感が大賞にふさわしい。

 


長野県知事賞

百足紋腰帯留金具(金工)

長井一馬(大町市)

 擬人化したムカデの表情がユーモラスである。
構成も技術も手なれたもので、そつがないが実際に使う場合は着物の色・柄との合わせ方が難しいかもしれない。その意味では展覧会用のショーケース・アートといった方がよいのだろう。


 虫をモチーフにしたジュエリーにはアール・ヌーボー時代のラリックなどの先例がある。この作品の場合は全体の自然主義的造形と様式化した頭部の処理との整合性に今一つ不徹底なものを感じるが、意欲的な表現は十分に魅力的である。

 もう一つの海獣文金具も古代中国の古典的な題材のアレンジに創意が感じられて楽しめる。

 

 


SBC信越放送賞

手紡天蚕織 爽風(染織)

和久井ゆき子(須坂市)

 

  黄色、緑色という少ない色数を基調にしながら、左右でトーンの変化をつけ表情を豊かなものにしている。
左右の模様にも破綻が無く、意匠の心地よいリズムを感じる。
指摘する点としては、色斑的に見えてしまう部分的な赤味も意図的なものであるならば、もう少し工夫がほしい。

 縞の幅も巧みに調整され、多色使いながら粋な中に品もある。タイトルの「飛鳥」にふさわしい悠久の時の流れに思いをはせることのできる格も示す紬である。

 


長野県教育委員会賞

月白輪花鉢(陶芸)

土屋 晃(長野市)

 やや深めの鉢に三ヵ所、ねじりぎみの輪花がほどこされている。
まずうすく透明釉を施し、その上に辰砂、さらに月白釉が輪花の線を意識して、ていねいに掛けられている。
 輪花の処理にそった釉掛けは、形と装飾を一体にしており、さわやかな作品となっている。

 

 


信濃毎日新聞社賞

氷 雪(人形)

竹腰米子(長野市)

 
 長い髪の若い女性がややうつむきがちに腰掛けている。ロングドレスの淡いブルーは物静かで楚々とした女性の純情さを示していよう。
椅子、その下の台は、透明感のある硬いアクリルとし、女性の心象を演出している。
 しかし、椅子に対して斜めに腰掛け、片方の脚をずらし、膝と脇とに手を置くなど、女性のポーズについては、あらゆる角度から造形的バランスに配慮している。
 女性の表情には微かな希望も見え、静謐な時間の経過の後に訪れるであろう、氷が解けるような安らぎも予感させる作である。

 


北澤美術館賞

うす赤色壷(陶芸)

竹内君則(千曲市)

 

 扁壷状の胴に大きめの立ちあがりをもった口がバランスよくマッチした形である。
 胴に施された線状の文様はテーピングした上に赤系の釉をふきつけたものであろうか。線がやや多いという感じも受けるが、マット状の質感と変化のある形にとけ込んで、モダンな印象の作品に仕上げられている。

 


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入選者一覧

会…長野県工芸会会員

花入れ
武居慶子
陶芸
暮色(変形焼締壷)
大槻 隆
陶芸
晩鐘(焼締壷)
大槻 隆
陶芸
晩秋
向山智充
陶芸
志野水指
石坂徳平
陶芸
窯変黒織部壷
石坂徳平
陶芸
自然釉舟形花器
小池智久
陶芸
織部板皿
小池智久
陶芸
炭化線紋鉢
水野雅史
陶芸
条彩皿
水野英男
陶芸
鉄釉鉢
宮澤菊男
陶芸
鉄釉深鉢
宮澤菊男
陶芸
秋郊
高地善之
陶芸
透かし象嵌 菊文様皿
内田みつよ
陶芸
彩泥扁壷 「敦煌」
坂口禮子
陶芸
組物花器 水芭蕉
岡田聖
陶芸
炭化六角花入
前島保夫
陶芸
炭化壷
前島保夫
陶芸
彩釉線紋鉢
大森国子
陶芸
彩釉紋鉢壷 「装う」
大森国子
陶芸
仁科三山アルプス絵花瓶
宮澤弘幸
陶芸
白釉掛分茶碗
宮澤弘幸
陶芸
彩泥線文鉢
滝沢敏子
陶芸
曜変天目三様
丸山正行
陶芸
青白磁波紋二段花生
岸田 怜
陶芸
染付四弁花紋組皿
岸田 怜
陶芸
薔薇貫入釉大鉢 「耿風の薔薇」
本間友幸
陶芸
薔薇貫入釉異形鉢 「翔」
本間友幸
陶芸
色象嵌紅葉文深鉢
小林陶春
陶芸
抜柄紋蓋物
山口美樹子
陶芸
窯変波流紋壷
白旗正俊
陶芸
窯変渦巻き文壷
白旗正俊
陶芸
陽炎
飯沼禮子
陶芸
カンブリアの系譜
西澤伊智朗
陶芸
金波文の青い器
篠田弘明
陶芸
Blue Peaks
篠田弘明
陶芸
自然釉壷
荻原恒夫
陶芸
志野市文花器
荻原恒夫
陶芸
練上青紗文壷
寺島ひとみ
陶芸
練上薔薇文八角組皿
寺島ひとみ
陶芸
彩泥藤文花器
宮原陽子
陶芸
鉄釉長壺
高山栄
陶芸
釉彩こぶし文壺
早川研夫
陶芸
マット釉白抜き白樺文壺
早川研夫
陶芸
山ぶどう紋かご花器
北田耕治
陶芸
黄瀬戸板皿
北田耕治
陶芸
瑠璃釉ひなげし図壷
篠田明子
陶芸
白青磁椿図花瓶
篠田明子
陶芸
彩泥薔薇文鉢
西村純一
陶芸
薔薇文鉢
西村純一
陶芸
炭化焼き締め
原民雄
陶芸
釉裏銀彩竹林文大皿
村越久子
陶芸
うのふ釉大鉢
村越久子
陶芸
大地U‐07
天戸真
陶芸
直弧文角皿
天戸真
陶芸
呉須桜文大皿
寺澤里美
陶芸
抹茶茶碗
上条英子
陶芸
志野釉紅梅図板皿
上条英子
陶芸
夜空の向こうに
酒井富美子
陶芸
溶岩ドーム
六川邦夫
陶芸
象嵌広口花器「夕景」
青木よし子
陶芸
染付五弁連続文壺
長谷川紀染
陶芸
こぶし象嵌花入れ
小野千恵子
陶芸
線彫花器
小野千恵子
陶芸
秋深まる
和田園江
陶芸
和田園江
陶芸
歌舞妓炎上
新井忠吉
陶芸
風頭
新井忠吉
陶芸
焼締螺旋階段
湯本万太郎
陶芸
花火大皿
湯本万太郎
陶芸
焼締花入れ
金子繁三
陶芸
螺旋焼締花器
金子繁三
陶芸
踊る波
曽根英司
陶芸
長首瓶
北澤良子
陶芸
老藤の花瓶
藤岡貞夫
陶芸
火襷花器
松本フサ子
陶芸
灰釉四方耳付大壺
松本邦之
陶芸
白泥幾何文鉢
原田真弓
陶芸
白泥雪輪文掻落し皿
原田真弓
陶芸
釉彩草花文皿
田中無斎
陶芸
鉄釉大皿
田中無斎
陶芸
青韻樹皮文07−4
小川芳信
陶芸
さくら
牧野完治
陶芸
石器釉壷茜
大石 操
陶芸
マンガン結晶釉大壷
大石 操
陶芸
いつの日か
谷口節子
陶芸
うす赤色壷
竹内君則
陶芸
クジャク釉大皿
町田俊文
陶芸
焼締灰の被り大壷
町田俊文
陶芸
織部水指
宮澤衛
陶芸
焼締壷 「玄奘」
宮澤衛
陶芸
焼締 打出花生 虚無僧
畔上清司
陶芸
象嵌花器
柳沢佑三
陶芸
麻ノ葉兎文皿
細井 ェ
陶芸
月白輪花鉢
土屋 晃
陶芸
炭化線文深鉢
宮澤道隆
陶芸
花紋炭化焼
柳沢和久
陶芸
回廊
小口富男
木竹
櫛目花籃
小出文生
木竹
早春
塚田菊枝
木竹
夢路
塚田菊枝
木竹
夕ぐれ時
二宮ます子
人形
お手伝い
赤羽喜子
人形
ポンポン(ヨーヨー)
金井すみ江
人形
早瀬の音
赤津律子
人形
氷雪
竹腰米子
人形
まだかな
原山桂子
人形
ジョーカー
戸井田紗代子
人形
親友
戸井田紗代子
人形
ポチー!
伊藤貞子
人形
何…?
百瀬玲子
人形
風と共に
大島和子
人形
休憩
今村鶴恵
人形
泥七宝蓋物 「午後のひととき」
平林義教
他の工芸
七宝林檎文「晴琉」
月岡栄子
他の工芸
秋の暮
富沢公子
染織
秋草の花
富沢公子
染織
訪問着 風の記憶
木村不二雄
染織
草木染友禅 松韻
小山仁郎
染織
手紡天蚕織 爽風
和久井ゆき子
染織
紬織着物「花芒」
中林康江
染織
紬織着物「朝まだき」
丸山匡子
染織
百足紋腰帯留金具
長井一馬
金工
海獣紋腰帯留金具
長井一馬
金工

 


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北澤美術館「長野県工芸展秀作展」

「第27回長野県工芸展」入選作品の中から、入賞作品およびそれに準ずる作品を

審査委員により選抜し展示しました。

会 期

平成19年

10月11日(木)〜10月21日(日)

4月〜10月/9:00〜18:00

※年中無休

場 所

北澤美術館本館

諏訪市湖岸通り1−13−28

 

踊る波

曽根英司(陶芸)

百足紋腰帯留金具

長井一馬(金工)

月白輪花鉢

土屋 晃(長野市)

氷 雪

竹腰米子(人形)

うす赤色壷

竹内君則(陶芸)

焼締 打出花生 虚無僧

畔上清司(陶芸)

白泥幾何文鉢

原田真弓(陶芸)

和田園江(陶芸)

大地U‐07

天戸真(陶芸)

瑠璃釉ひなげし図壷

篠田明子(陶芸)

マット釉白抜き白樺文壺

早川研夫(陶芸)

金波文の青い器

篠田弘明(陶芸)

色象嵌紅葉文深鉢

小林陶春(陶芸)

薔薇貫入釉大鉢 「耿風の薔薇」

本間友幸(陶芸)

彩釉紋鉢壷 「装う」

大森国子(陶芸)

条彩皿

水野英男(陶芸)

窯変黒織部壷

石坂徳平(陶芸)

ジョーカー

戸井田紗代子(人形)

お手伝い

赤羽喜子(人形)

櫛目花籃

小出文生(木竹)

 

 


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