審 査 講 評
審査委員長 榎本 徹
ここ数年の審査の記憶の中でも、今年の作品のレベルはかなり高い。
一点、一点質の高い作品が、ジャンルを問わず、バラエティーに富んだ形で出品されたということだ。とくに、人形が全体としても、優れたレベルを見せている。
残念ながら落選した作品は、大きくふたつにわけられる。ひとつはキズや仕上げの雑さなど、技術的な問題が見られた作品で、これは「工芸」というジャンルが、必然的に要求している完成度の必要性という点で理解してほしい。もうひとつは、作品の大きさの問題で、美術館という場に展示して、多くの人に見てもらうには、茶碗などを除いて、自分にしかないメッセージを作品に込めるという意味でも、ある程度の大きさが要求されているということである。
入選した作品の中にも、手をかけすぎて、いい作品を台無しにしてしまったり、たとえば陶芸では、全体としてはいい仕事をしながら、口など一部分に力が抜けてしまい、作品の完成度を壊してしまった作品などが気になった。とはいえ、これが全体のレベルを下げたとはいえず、今回の展覧会が、長野工芸会の展覧会として、ここ数年では、最も高いレベルを示したことを、素直に喜びたい。