審 査 講 評
審査委員長 外 舘 和 子
第31回長野県工芸展は、東日本の震災による世の中の萎縮ムードにもかかわらず、152点の応募があった。
工芸や美術が「余剰」ではなく、むしろ「必須」のものであることを、長野県の作り手たちが示してくれたようで誠に頼もしい。そのうち115点が厳正な審査により入選となった。
出品数のうえで最多を占める陶芸は、とりわけ常連の出品者のなかに、従来の自作とは異なる新たな挑戦によって成果を示した作品が目を引き、それらは受賞作にも顕著に表れている。しかし一方で、旧来的な形態に終始し、作者の創意が余り感じられないものも散見された。特に、焼き締めの壷や、茶碗など、通念的なフォルムや釉調に甘んじる姿勢は改めなければならないであろう。
染織は全体に水準が高く、七宝なども点数は少ないものの質の高さが際立っていた。人形は数の減少のみならず、やや細部の荒さ、あるいはポーズ、バランスに一考を要するものがみられた。また、漆芸は少数ながらユニークな作品が出品されている。
展覧会全体としては、長野県工芸展らしいバラエティに富んだ幅広い作風がそろい、来年に向けて早くも期待が増している。