NAGANOKEN-KOGEIKAI

県民芸術祭2014参加

第34回 長野県工芸展

ホクト文化ホール (長野県県民文化会館)

平成26年 9月18日(木)~9月21日(日)

午前9時~午後5時 (最終日は午後4時終了)

主 催/ 長野県工芸会・ SBC信越放送

共 催/ 長野県・ 長野県教育委員会・ 長野県芸術文化協会

後 援/ 長野市・長野市教育委員会・信濃毎日新聞社

 


 

 審査 委員

 鈴 木   潔  (滋賀県長浜アートセンター館長)

 田 中 晴 久  (東京都目黒区美術館 館長)

 外 舘 和 子  (工芸評論家、愛知県立芸術大学非常勤講師)

 大日方 悦 夫  (長野県信濃美術館 学芸課長)

 小 出 文 生  (長野県工芸会 会長)

(敬称略・順不同)


 

審 査 講 評

審査委員長 鈴木 潔 

 長野県工芸会は、中立の立場の審査員を外部から招き、公開の場で審査を行なっている。出品者らが近くで見守る中で、入選、入賞の審査が行われるのである。公募展としては異例といえるガラス張りのオープンな審査が行われるに至った道程は、必ずしも平坦ではなかった。
会員諸氏、とりわけ、水野英男元会長と深澤淡齋前会長ら歴代役員の方々の熱意の賜物が、今日の公明正大を旨とし、審査に情実が入り込む要素を排除した折り目正しい気風を育てたといってよいだろう。

  今回の審査においてもこの方針が堅持された。入選作品の水準にバラつきがあるのは否定出来ないが、作者の創意工夫や悩んだ跡が認められる作品については、完成度がいまひとつの場合でも、さらなる精進を期待して選ばせていただいた。

一方、技術面ではそつがないものの、市販品に類する作品や、作者の意図が不明確なものは選外となった。惜しくも落選となった作品に関しては、落選理由の説明と今後の参考にしていだくためのアドバイスなどが、審査員と出品者の間で交わされたことを特記しておきたい。

  また、毎年出品を続けておられるベテラン会員が、これまでの路線を一変させる新たな表現にチャレンジされたケースが少なくなかったのは、審査員にとっては嬉しい誤算であった。審査過程では作者名は伏せられている。そのため、審査員にとっては誰が作ったのかまったく見当がつかない魅力的な作品との新鮮な出会いがあった。
小出文正会長によれば、工芸の魅力とは、それを愛でる人のこころをなごませ、癒す作用にあるという。作り手のこころが作品に込められ、それが形を通じて、鑑賞者のこころに伝わるのである。

  信州発の「こころからこころに至る」交流のメッセージを持った作品が、今後も増えてゆくことを願って止まない。


 


第34回 長野県工芸展 入賞作品

長野県工芸会長賞

悠  久
佐藤今朝寿
陶芸

長野県知事賞

垣根ごしの春秋の花
大塚里美
諸工芸

SBC信越放送賞

碧珠志野縞紋鉢
丸山正行
陶芸

長野県教育委員会賞

気  配
百瀬玲子
人形

信濃毎日新聞社賞

アレチウリの宴
木村不二雄
染織
北澤美術館賞
紫蘇化粧水指
小池智久
陶芸

 


長野県工芸会長賞

34-1

悠  久(陶芸)

佐藤今朝寿 (松本市)

 たっぷりとした量感のある焼き締めの壺。口の周囲に少し肩となる面を作り、その肩のラインから底へ向かって、力強い窪みが、太く細くのリズムを繰り返しつつ、帯状に深く刻まれている。
染織でいう「よろけ模様」に似た模様だが、焼き締めならではの赤褐色の土の肌合いや、やきものの造形言語によって、全く別次元の表現へと至った。
焼成中に降りかかった灰は黄色に発色して、模様の凹凸に一層の奥行と変化を与え、フォルム全体においても、上部の黄色から下方の赤へ、豊かな景色を生み出し、迫力ある作品となっている。

(外舘和子)

 


長野県知事賞

34-2

垣根ごしの春秋の花 (諸工芸 七宝)

大塚里美 (東京都)

 
  伝統的な八葉蓮弁文を巡らした蓋物である。
蓮弁の枠の中には、染織品を連想させる紺の濃淡の色調を組み合わせたストライプを並置している。それらの直線的な意匠を背景にして、ゆらぎながらアトランダムに上下する花文が散らされている。
文様の動きの対比が小気味よく、抑制を効かせた釉薬の色使いに溶け込む銀線の白い輝きも効果的である。
過剰になる手前で仕事を止めた巧みな設計が光る。繊細で落ち着いた情趣をたたえる作品に仕上がっていると思う。

(鈴木 潔)

 


SBC信越放送賞

34-3

碧珠志野縞紋鉢(陶芸)

丸山正行 (長野市)

 

 底から口縁へ一気に広がるシャープなかたち。青みと白を交互に組み合わせた「縞」模様は、いわゆる平行するストライプではなく、いわば極細の三角形が、互い違いに繰り返された独自の「縞」である。その鋭いラインが、鉢の拡がるフォルムを一層切れ味よく引き立てている。
表面を覆う志野すなわち長石釉の縮み跡も、作品に確かな厚みを加えている。
桃山時代の志野とは180度印象を違えた、まさに現代の志野による表現といえよう。

(外舘和子)

 


長野県教育委員会賞

34-4

気  配(人形)

百瀬玲子 (松本市)

 
 何かの物音に一瞬振り向いた女性の姿を映している。
チラッと後ろに目を送り、ゆったりと立つ女性は、落ち着いた物腰で慌ててはいない。目と眉は細い線で引かれている。唇とともにより丁寧に描けばさらに魅力が増しただろう。
衣装は、作者の持つ紬や縮緬の古布や帯を使い、人物の性格も表すように、落ち着いた色調を示している。髪の毛をあえて黒髪にしなかったことも、全体の色調の統一を図るうえで効果があった。

 (田中晴久)

 


信濃毎日新聞社賞

34-5

アレチウリの宴(染織)

木村不二雄 (須坂市)

 七日月頃の夕暮れ、強い生命力を持つアレチウリの繁る園に、小動物が集まり宴を繰り広げる。
月を背景に濃淡のある墨で染められたアレチウリの葉や茎が静かに広がる。
その中に、昆虫や小動物がカラフルな姿を現す。薄墨色の中に、草木染の落ち着いた色が微笑ましく主張する。
葉や茎の配置、デザイン、色彩いずれも全体の構図の中でよく考えられている。

             

 (田中晴久)

 


北澤美術館賞

34-6

紫蘇化粧水指(陶芸)

小池智久 (長野市)

 
 

滑らかな白い土のラインが、上部で僅かに反り返る。共土で作られた蓋が、その広がりの中にストンと収まっている。
蓋のツマミもやはり共土が使われているが、そこだけ無釉としたのは、指でつまみ易く(落としにくく)したという意図もあるのだろうか。いずれにせよ、小鳥のようなツマミのかたちも秀逸である。
ボディの上に、控え目に筋目を入れた茶系の帯もポイントとなっている。現代の茶席にふさわしいモダンな水指は、蓋を開けるとブルーの釉調も爽やかである。

(外舘和子)

 

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入選者一覧

会員…長野県工芸会会員

紺色…北澤美術館「長野県工芸展秀作展」選出作品

焼締壺 雲海
愛甲宏明
陶 芸
備前焼鉢
愛甲宏明
陶 芸
天を焦がす
青木一浩
陶 芸
抜絵文花器「宙へ」
青木よし子
陶 芸
猛暑
赤津律子
人 形
初物
赤津律子
人 形
焼締四方花入三筋線彫
畔上清司
陶 芸
時空を越て
新井忠吉
陶 芸
志野累座耳付水指
石坂徳平
陶 芸
風化志野茶盌  
石坂徳平
陶 芸
一輪生けてみましょうか
 
市川あや子
陶 芸
焼締壺
宇都宮良幸
陶 芸
涼風
宇都宮良幸
陶 芸
老猿
宇野修栄
陶 芸
穴窯条文鉢
宇野修栄
陶 芸
陶小紋偏壺2014
大石 操
陶 芸
樹間-春遠からじ
大久保利子
陶 芸
緑釉削紋鉢
大久保利子
陶 芸
垣根ごしの春秋の花
大塚里美
諸工芸
晩秋
大森國子
陶 芸
白い渦巻
大森國子
陶 芸
おまたせー
大輪冨美子
人 形
リハーサル
大輪冨美子
人 形
積重ねを つみかさねる
荻原恒夫
陶 芸
粉引茶碗
荻原恒夫
陶 芸
梅信
小口好子
諸工芸
赤トンボ
金井すみ江
人 形
日々これ好日
金井すみ江
人 形
黒天目釉花器
川合皓
陶 芸
焼締壺
川合皓
陶 芸
NINE SPIRAL
川口博子
陶 芸
彩風車線紋象嵌花器
木内洋介
陶 芸
線条紋象嵌花器
木内洋介
陶 芸
薫風佇つ
北沢 幸男
陶 芸
川岸Ⅰ
木下紀子
染 織
アレチウリの宴
木村不二雄
染 織
葡萄兎紋鉢
木村由里子
陶 芸
悠久なる帰港
小池智久
陶 芸
紫蘇化粧水指
小池智久
陶 芸
七宝網代盛皿
小出文生
木 竹
作品・ゆらぐ
高地善之
陶 芸
象嵌幾何紋壺
小林聖生
陶 芸
泥彩幾何紋壺
小林聖生
陶 芸
草木染友禅山陰追想
小山仁郎
染 織
輪彩
酒井富美子
陶 芸
坂口禮子
陶 芸
坂口禮子
陶 芸
型染着物「暁翔」
佐藤亜都子
染 織
緑塔
佐藤 今朝寿
陶 芸
悠久
佐藤 今朝寿
陶 芸
釉裏紅象嵌花瓶
篠田明子
陶 芸
淡彩染付紫陽花壷
篠田明子
陶 芸
彩何大鉢「カーニバル」
篠田弘明
陶 芸
彩磁喰籠
篠田弘明
陶 芸
新雪
下澤竹子
人 形
蒼風
下澤竹子
人 形
BLOOM
菅内理夏
諸工芸
彩泥重堀出花瓶
清家孝雄
陶 芸
再生の符
竹内君則
陶 芸
足湯
竹腰米子
人 形
作品NO.1
竹本敏晃
陶 芸
鉄黒釉大壷
田中無斎
陶 芸
蓋物あうんのあ あうんのうん
谷口節子
陶 芸
森のアートビレッヂ
塚田光弘
陶 芸
みなぎる力
月岡彰夫
陶 芸
初秋
月岡栄子
諸工芸
明日へ
月岡栄子
諸工芸
紫紅釉楕円鉢
土屋 晃
陶 芸
Shelter
坪内真弓
陶 芸
練上花紋長方皿
寺澤里美
陶 芸
練上薔薇文組鉢
寺島ひとみ
陶 芸
紬織着物「雪の川」
中林康江
染 織
風のドーム
中山 康
陶 芸
森の記憶~環~
中山 康
陶 芸
山葡萄のお出掛バッグ
南海文枝
木 竹
山胡桃のお出掛バッグ
南海文枝
木 竹
彷徨の果てに得たもの
西澤伊智朗
陶 芸
風文深鉢
西村純一
陶 芸
白磁彩香炉
西村純一
陶 芸
夜明け前
野池光昭
陶 芸
丸花入れ
野池光昭
陶 芸
吹墨山と白樺図鉢
早川研夫
陶 芸
三つの方向
早川研夫
陶 芸
織部壷
原民雄
陶 芸
志野茶碗
原民雄
陶 芸
ひこばえ
原山桂子
人 形
かけ花入
樋口健太
陶 芸
花ビラ
樋口健太
陶 芸
里山の秋
広瀬弘司
陶 芸
網目の壺
藤岡貞夫
陶 芸
鶴首の壺
藤岡貞夫
陶 芸
青釉大鉢
本間友幸
陶 芸
薔薇貫入釉陶板
「安曇野の風」
本間友幸
陶 芸
滴珠赤紋方形鉢
丸山正行
陶 芸
碧珠志野縞紋鉢
丸山正行
陶 芸
焼締メ洗い出し花入
宮坂虔二
陶 芸
黄瀬戸釉花入
宮坂虔二
陶 芸
白釉掛け分け抹茶碗
宮澤弘幸
陶 芸
変貌
向山智充
陶 芸
気配
百瀬玲子
人 形
森あけみ
陶 芸
森あけみ
陶 芸
冬の陽光
山縣民子
染 織
飴釉白流し水指
吉川孝子
陶 芸
布染麻ノ花文鉢
吉川孝子
陶 芸
流れⅡ
六川邦夫
陶 芸
線文花器
和田園江
陶 芸
彩色花器
和田園江
陶 芸

会員…長野県工芸会会員

紺色…北澤美術館「長野県工芸展秀作展」選出作品


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