NAGANOKEN-KOGEIKAI

県民芸術祭2016参加

第36回 長野県工芸展

松本 ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)
1Fギャラリー

平成28年9月15日(木)~9月19日(日・祝)

午前9時~午後5時 (最終日は午後4時終了)

主 催/ 長野県工芸会・ SBC信越放送

共 催/ 長野県・ 長野県教育委員会・ 長野県芸術文化協会

後 援/ 長野市、長野市教育委員会 信濃毎日新聞社


 審査 委員

 外 舘 和 子 (工芸評論家・愛知県立芸術大学非常勤講師)

 榎 本 徹  (岐阜県現代陶芸美術館 顧問)

 鈴 木 潔  (滋賀県長浜アートセンター館長)

 瀬 尾 典 昭 (長野県信濃美術館研究主幹)

 早 川 研 夫 (長野県工芸会 会長)

(敬称略・順不同)

 

審 査 講 評

審査委員長 外 舘 和 子 

  第36回長野県工芸展は103点の応募があり、そのうち96点が入選を果たした。出品数はやや減ったものの、全体に作風のマンネリ化を避け、作者のキャリアの長短にかかわらず、新鮮な作品が出てくる様子は、この長野県工芸展の長所である。

陶芸は、2点出品という意欲を示す人々がいる一方で、サイズの上ではやや小さくまとまる傾向が、特に皿や鉢などのうつわにしばしば見られた。もう二回りほど大きければ、作者の世界観がしっかりと伝わってくるはず、と思われる惜しい作品が目についた。作品全体のバランス、形態のフィニッシュである口づくりなど、自作を冷静に見つめる目も必要である。

 染織は水準が高く、意匠、完成度とも精鋭が揃っている様子である。人形は例年より数が少なかったが、作者ごとの個性の違いは示されている。七宝は、技術力、表現内容とも見ごたえがあったが、最終的な見せ方を検討する余地のあるものも見られた。

竹工芸は勿論、木工や漆など、他の工芸素材領域からも、さらに出品者が増えることを望むところである。

 


第36回 長野県工芸展 入賞作品

長野県工芸会長賞

型染着物「林廻」
佐藤亜都子
染織

長野県知事賞

道 標
竹内君則
陶芸

SBC信越放送賞

いそぎく
小口好子
諸工芸

長野県教育委員会賞

ブロスフェルトの水差し
西澤伊智朗
陶芸

信濃毎日新聞社賞

彩泥文鉢」
坂口禮子
陶芸
北澤美術館賞
彩磁山葡萄文器
篠田弘明
陶芸
奨励賞
練上薔薇文三角組鉢
寺島ひとみ
陶芸
奨励賞
御柱猫
平林義教
諸工芸

 


長野県工芸会長賞

型染着物「林廻」(染織)

佐藤亜都子 (安曇野市)

 作者によればモチーフは八ヶ岳の冬景色である。
青い地を背景に、冬枯れの白い木々の集合体が、横段を形成しながらリズミカルに繰り返されている。

裾には木々がひときわ大きく配され、着物全体に奥行も表現されている。

型染の性質を活かした模様の繰り返しが、あたかも無限に広がる空間を想わせる幻想的な作品である。

外舘和子

 


長野県知事賞

道 標 (陶芸)

竹内君則 (千曲市)

 スケール感をもたせた造形に、表面をざらざらにした質感がすばらしい。

 道標というタイトルも素直にうなずけるモニュメンタルな作品として高く評価したい。

榎本 徹

 

 


SBC信越放送賞

いそぎく(諸工芸)

小口好子 (茅ヶ崎市)

 有線七宝の蓋物。白と白銀で表現したいそぎくのモチーフが清楚な美を感じさせる。中心部にわずかに差したピンクと青のぼかしが効果的である。銀の薄板を卵形と三角形にカットした細片を並べているため、しっとりとしたきらびやかさも併せ持ち、周囲の深い濃紺の色彩と絶妙なコントラストを生んでいる。

蓋を取ると、きくの葉を彫金した装飾が表れる筥の造形も見どころで、焼成過程での歪を上手く回避した技術も冴えている。全体のゆったりとした膨らみが、微細な装飾の表情と心地よい対比を成している。

作者は90歳という高齢だそうだが、洗練された完成度の高い仕事に作家人生の年輪を感じさせて余りある。

鈴木 潔

 


長野県教育委員会賞

ブロスフェルトの水差し(陶芸)

西澤伊智朗 (長野市)

 
 

 ふっくらとしたボリュームある形態は、何かの果実のような充実感を示している。

ヘタ部分は蓋に、果実の膨らみの一部は四つの足のように、ややせり出してボディを支え、作品は水指としての機能も持つようだ。

土ものならではのプリミティブな雰囲気を存分に活かした質感や、作品全体の逞しさが、植物のもつ根源的な生命力を想わせる優品である。


外舘和子

 


信濃毎日新聞社賞

彩泥文鉢(陶芸)

坂口禮子 (長野市)

 野太いといってよいだろうか、そんな感性を持っていながらモダンな形態感が目を引く。下部にある黒い部分に対して、鮮やかな色彩が上部に展開されている。その対比が明快であるとともにザラッとしたテクスチャーが強さになっており、しかも嫌味がないところがよい。

上部に広がった器の形態はどっしりとした安定感を持ち、その周りに取りまく空間の大きさを感じさせることによって、この強い色彩をうまく支えているのが成功の理由であろう。

瀬尾典昭

 


北澤美術館賞

彩磁山葡萄文器(陶芸)

篠田弘明 (塩尻市)

 

端正な作品である。とくに奇をてらうことなく、抑えた色彩ながら豊かな世界を感じさせる。技術的にも高度なレベルと安定感を持っていて、葡萄のツル、葉、房が、円筒状の表面にぐるりと回されたバランスもよい。しかも、房の部分に濃紺色と淡い紫色をあしらっているのがポイントとなって、器全体を引き締めている。

器形そのものが平凡であることは否めないが、それを差し引いても現代的な要素をみせる洒落たセンスを感じさせる巧さも持ちあわせているようにみられる。


瀬尾典昭


奨励賞

練上薔薇文三角組鉢(陶芸)

寺島ひとみ (長野市)

 
 

 まず、練上という平面的を要求する技法で、かなり深い三角形の鉢を立ち上げたことを評価したい。

二色のバラもよいコントラストで、文様と器がよくマッチした好ましい作品である。

榎本 徹

 

 

 


奨励賞

御柱猫(諸工芸)

平林義教 (諏訪市)

 
 

 台座の龍は諏訪湖の龍神を表し、湧き立つ雲の中から猫が出現するイメージの作品となっている。龍は諏訪大社の彫り物を手掛けた江戸時代の立川流の彫刻を参照したものという。

猫はこの作者が長年手掛けているモチーフ。首の前に神社のしめかけ風の飾りをあしらい神紋を黄金色の釉薬で描いている。他にも吉祥文である瓢箪を散らすなど、諏訪地方で行われる御柱祭りの華やかな雰囲気を取り込んだデザインになっている。アクリルの四隅の柱が御柱を連想させる。


鈴木 潔

 


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入選者一覧

会員…長野県工芸会会員

紺色…北澤美術館「長野県工芸展秀作展」選出作品

呉須絵青文壺
一般
愛甲宏明
陶 芸
藍色染付絵壺
一般
愛甲宏明
陶 芸
良い香り
一般
青木一浩
陶 芸
青釉壺~青空-mind fullness~
会員
荒井寿子
陶 芸
鉄釉線紋壺 ~魂~
会員
荒井寿子
陶 芸
焼締急須
会員
安藤哲夫
陶 芸
畑のヒーロー
一般
臼田文子
染 織
焼締壺
一般
宇都宮良幸
陶 芸
流氷のかえる日
会員
大石 操
陶 芸
志野水指
会員
大石 操
陶 芸
鉄釉幾何紋花器
一般
大久保利子
陶 芸
鉄釉白釉流鉢
一般
大久保利子
陶 芸
聞こえる!
会員
大森國子
陶 芸
会員
大輪冨美子
人 形
亀甲氷裂鉢
一般
岡田暁子
陶 芸
青釉氷裂鉢
一般
岡田暁子
陶 芸
引出し黒茶碗
会員
荻原恒夫
陶 芸
いそぎく
一般
小口好子
諸工芸
鉄釉野葡萄文蓋物
一般
垣内秋男
陶 芸
飴釉花器
一般
垣内秋男
陶 芸
朝鮮唐津双耳壷
会員
川合皓
陶 芸
燻し黒釉壷
会員
川合皓
陶 芸
練込綾杉濃淡紋様八方組皿
会員
木内洋介
陶 芸
線象嵌TRIBAL
会員
北沢 幸男
陶 芸
BLUBⅣ
会員
北沢 幸男
陶 芸
満開
会員
木下紀子
染 織
忘れられた時(ろうけつ染)
会員
木村不二雄
染 織
鳥紋角皿
一般
木村由里子
陶 芸
細水指
会員
小池智久
陶 芸
陶弓
会員
小池智久
陶 芸
花籃「穂波」
会員
小出文生
木 竹
雲の球根
会員
高地善之
陶 芸
色象嵌鷺草文鉢
会員
小林陶春
陶 芸
象嵌幾何紋壷
一般
小林聖生
陶 芸
Rhino
一般
小林聖生
陶 芸
屏風 樹氷
一般
小山仁郎
染 織
訪問着 松韻
一般
小山仁郎
染 織
彩泥文鉢
会員
坂口禮子
陶 芸
型染着物「林廻」
会員
佐藤亜都子
染 織
亀甲の舞
会員
佐藤今朝寿
陶 芸
風車の舞
会員
佐藤今朝寿
陶 芸
志野矢羽文板皿
一般
篠井浩子
陶 芸
釉裏紅象嵌壷
会員
篠田明子
陶 芸
彩磁山葡萄文器
会員
篠田弘明
陶 芸
砂韻 2016-1
会員
篠田弘明
陶 芸
道標
会員
竹内君則
陶 芸
風花
会員
竹腰米子
人 形
鉄釉掛分鉢
一般
立花睦子
陶 芸
鉄絵草文鉢
一般
立花睦子
陶 芸
家族写真(花入れ) 1組4点
会員
谷口節子
陶 芸
栗貼り付け香炉
会員
谷口節子
陶 芸
新涼安曇野の風
会員
塚田光弘
陶 芸
七宝「アルプス乙女」
会員
月岡栄子
諸工芸
紫紅螺旋紋鉢
会員
土屋 晃
陶 芸
Spiral
一般
坪内真弓
陶 芸
練上矢羽根紋輪花組皿「青嵐」
会員
寺澤里美
陶 芸
練上薔薇文三角組鉢
会員
寺島ひとみ
陶 芸
平成の龍馬
一般
徳武悦二
木 竹
それぞれの行方
会員
中山康
陶 芸
食物連鎖の夕暮
会員
西澤伊智朗
陶 芸
ブロスフェルトの水差し
会員
西澤伊智朗
陶 芸
青磁深鉢
一般
西沢千恵子
陶 芸
窯変織部
会員
野池光昭
陶 芸
焼締花入れ
会員
野池光昭
陶 芸
五輪塔
会員
浜 利秋
陶 芸
春待つⅠ
会員
早川研夫
陶 芸
白樺林図水指
会員
早川研夫
陶 芸
焼締茶碗
会員
原民雄
陶 芸
流風
会員
原山桂子
人 形
御柱猫
会員
平林義教
諸工芸
網目の壺
一般
藤岡貞夫
陶 芸
朝靄
一般
藤澤純江
陶 芸
志野花さし
一般
藤澤純江
陶 芸
紫式部和歌大皿
一般
藤澤不二
陶 芸
飛鳥
一般
星野幸恵
人 形
むかし、むかし
一般
星野幸恵
人 形
銀化鉄釉壺
会員
堀内珠実
陶 芸
鉄釉渦文鉢
会員
堀内珠実
陶 芸
自然釉鉢
会員
本間友幸
陶 芸
亜鉛結晶釉鉢
会員
本間友幸
陶 芸
窯変鉄釉白流鉢
一般
松井都矢子
陶 芸
盛泥草花紋鉢
一般
松井都矢子
陶 芸
紅葉文象嵌花入
会員
松本邦之
陶 芸
鉄釉野葡萄文壺
会員
丸山正行
陶 芸
鉄釉編笠文鉢
会員
丸山正行
陶 芸
炭化線文深鉢
会員
水野雅史
陶 芸
炭化線文鉢
会員
水野雅史
陶 芸
赤色流紋壷
一般
三村貞夫
陶 芸
辰砂茶碗
会員
宮澤弘幸
陶 芸
焼締茶碗
会員
宮澤弘幸
陶 芸
郷愁
一般
森あけみ
陶 芸
一般
湯田明美
人 形
ねがい
一般
湯田明美
人 形
和紙染水指
一般
吉川孝子
陶 芸
和紙染花器
一般
吉川孝子
陶 芸
流彩
会員
吉田美恵子
陶 芸

会員…長野県工芸会会員

紺色…北澤美術館「長野県工芸展秀作展」選出作品


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