審 査 講 評
審査委員長 榎本 徹
第37回長野県工芸展は96点の応募があり、そのうち95点が入選をした。落選はたった1点である。落選作品1点というのはここ何年も例がない。この1点とて、技術ではなく、いわば考え方での落選であり、惜しい作品だった。このことは、展覧会全体のレベルが上がっていることを示しており、出品数はやや減ったものの、すぐれた作品が多かったことを示している。とくに個々の作家が、その技術をあげており、明らかに今までとは違う作品を見ることができたことは審査委員としては嬉しいことである。とくに今年は陶芸に優れた作品が多かったのが印象的であった。
その陶芸は、受賞作の大半を占め、受賞にいたらなかった作品のなかにも、明らかに受賞レベルに達していた作品がかなりの数に上ったことを記しておきたい。ことに、茶碗や急須という、いままであまり目立たなかった作品にもいいものがあったことも喜びたい。陶芸以外では
漆工作品に素晴らしいものが出されたのがうれしい。ここ数年を思うと、今年は作品の大きさが少し遠慮気味だったことが気になることで、1年に1度の展覧会、ぜひ大きさでも頑張ってほしい。
近年、公募展の出品点数が減少しているのは、どこの公募展でも指摘されていることであるが、それぞれのジャンルで、競い合うことで、必ず新しい地平が開かれて来ることは過去にも実証されており、意欲的な作品が数多く出品されることを期待したい。
今年は陶芸が好調だったと記したが、従来見なかった新鮮な技法やデザインが目についた。ひとりの作家の成長を見ることも、審査の楽しみである。ぜひ多くの作家の奮起を期待したい。
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