令和3年 8月27日(金)~8月31日(水)
午前9時~午後5時 (最終日は午後3時30分終了)
主 催/長野県工芸会、SBC信越放送
共 催/ 長野県、長野県教育委員会、長野県芸術文化協会
後 援/ 信濃毎日新聞社
審査 委員
榎 本 徹 (岐阜県現代陶芸美術館 顧問)
田 中 正 史 (長野県立美術館学芸課長)
外 舘 和 子 (多摩美術大学教授)
早 川 研 夫 (長野県工芸会 会長) (敬称略・順不同)
第40回記念 長野県工芸展 入賞作品
長野県工芸会長賞 | 佇む | 高地善之 | 陶 芸 |
40回記念賞 | 銘々皿「旅の記憶」 | 井坂友美 | 漆 芸 |
長野県知事賞 | 花籃「京の絹衣」 | 青天目和之 | 木 竹 |
SBC信越放送賞 | 我が根は森の奥にあり | 平林義教 | 諸工芸 |
長野県教育委員会賞 | 朝の海 | 小山仁郎 | 染 織 |
信濃毎日新聞社賞 | 花籃 「夕影」 | 小出文生 | 木 竹 |
奨励賞 | 交わる形~連鎖~ | 中山 康 | 陶 芸 |
奨励賞 | It’s show time | EKORROT | 陶 芸 |
審 査 講 評 審査委員長 榎 本 徹
私がこの展覧会の審査に加わって、何年になるだろうか。かなりの年数に違いない。その最初の頃を思い出しているのだが、今回の作品とは様変わりといえる。 とにかくレベルの向上が著しいのである。とくに今回の入賞作品は、どのような展覧会に出しても恥ずかしくない作品がそろっている。数年前の展覧会と比べても、新しい作品が数多く加わっていることは明らかである。 もちろん陶芸作品は多いのだが、新しいジャンルの作品が今回は目についた。漆工芸の斬新な作品、木彫の意欲的な作品など、新しい作品に見るべき物が多かった。これは喜ぶべき現象といえるだろう。 アートの世界は広く大きい。新しい刺激が必要な分野であるのは議論を待たない。40回を迎え、ジャンルが広がり、作品の質が向上していることを会員の皆様と喜び合いたい。
長野県工芸会長賞
佇 む 陶 芸
高地善之 (松川村)
ロクロと手捻り成形による四つ足の動物は、静かにたたずんでいる。背は開かれ、この動物は体内に重要な何かを抱えているようだ。
全身を金属的な釉調に包まれた存在は、どこか神々しく、静けさと祈りを想わせる。 動物などの具象的な表現が隆盛をみる昨今であるが、この作品は、通年的な動物表現とは異質な魅力を持ち、存在感を示している。
外舘 和子
40会記念賞
銘々皿「旅の記憶」 漆 芸
井坂友美 (佐久市)
きわめて細かい金や銀や銅の粉が、あたかも、銀塩写真の粒子を置き換えたかのように、旅の記憶を表現しており、その手法の独創性に感心した。
これまでに例を見ない蒔絵の技法の応用であり、今後の展開についても、大きな可能性を見出せる。
田中 正史
長野県知事賞
花籃「京の絹衣」 木 竹
青天目和之 (東御市)
染めた竹の風合いと、その色の組み合わせが絶妙で、全体も非常に簡潔な構造でありながら、おもしろい形状に仕上がっている。
花籃として程よい大きさで、細部に至るまで丁寧に竹が組まれており、 完成度の高さを感じさせている。
田中 正史
SBC信越放送賞
我が根は森の奥にあり 諸工芸
平林義教 (諏訪市)
円形の蓋物の七宝作品である。全体が、マットな青い泥釉で覆われ、深い森のイメージが表現されている。
とりわけ銅板の煌きを生かしたゼンマイをポイントに、銀線や真ちゅうの線で植物の茂る様子が奥行きを持って表現されている。
蓋を開けると内部にも真ちゅう線で細やかな苔の表現。七宝による新たな世界を築いて秀逸である。
外舘 和子
長野県教育委員会賞
朝の海 染 織
小山仁郎 (長野市)
額装された染色作品は、画面右側を静かな凪、画面左側から下を沸き立つ波で描き分けつつ、それが巧みに一つの画面に組み合わされている。
各モチーフは友禅の糸目糊の技術により細やかな線で表現する一方、蒔き蠟のテクニックで、水面にテクスチャーとニュアンスを加えた。色調のグラデーションも美しい。
外舘 和子
信濃毎日新聞社賞
花籃 「夕影」 木 竹
小出文生 (長野市)
竹で編んだ花籃であるが、竹を染める色を使わず、すっきりとしたバランスの良い形状と、特徴的な竹の組み方だけで、新たな表現に挑戦している。
横に組まれる竹が、斜めに広がりながら繰り返してゆくリズム感が、造形的に心地よい。なにより作品から気品が漂ってくることが一番の魅力である。
田中 正史
奨励賞
交わる形~連鎖~ 陶 芸
中山 康 (小布施町)
複雑な作品である。質感のちがう形が絡みあっている。すこし気持ちが悪い見え方もすごい。オブジェもここまで作り込めば、迫力を生み出す。
質感の操作、その優れた造形力を高く評価したい。
榎本 徹
奨励賞
It’s show time 陶 芸
EKORROT (長野市)
うさぎのかおをしたオブジェである。
それはシルクハットをかぶりアリスの物語を連想させる。しかし、それは自然釉がかかっているように見えるほど、やきもの的である。この点をよしとしたい。
オブジェらしくない点がいちばん評価したい作品である。
榎本 徹
入選者一覧
会員…長野県工芸会会員
※40回記念事業として会員入選作品を掲載します。※